
ムラヴィンスキーとレニングラード・フィルの一行は、1960年にイギリスに演奏旅行に出た。その際にドイツ・グラモフォンはチャイコフスキーの交響曲第4番、第5番、第6番のセッション録音を敢行した。これはそのうちの一枚で、歴史的な名演として聴き継がれて来た。これではちょっと素気ないというか、甘ったるさがあっても良いだろうにと思ってしまうが、ムラヴィンスキー様は下々の感傷への耽溺など知ったことではないのだ。いや楽旅にはKGBが随行していたに違いなく、いつだれが亡命を図るかと戦々恐々の毎日で、ゆとりがなかったのかもしれない。何よりソ連録音じゃなくて、良い音で録音されているのがうれしい。(1961年)