2022年05月18日

MAROの"偏愛"名曲案内 〜フォースと共に / 篠崎史紀

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NHK交響楽団のコンサート・マスター、篠崎史紀さんは「MARO」の愛称で親しまれている。N響の演奏をテレビで観ると、指揮者との対談や解説をしていらっしゃることもある。クラシック音楽の解説書は、得てして作曲者の生涯やら歴史的経緯、音楽理論上の立ち位置など、「演奏」や「音」からかけ離れたところで小難しく語られることが多いが、ここでは演奏することで見えて来た景色が著者の言葉で語られている。掲載されている曲を聴きながら、パラパラとめくっては連想をめぐらすのが楽しくなる本だ。「フォースと共に」はもちろん映画「スター・ウォーズ」からの借用で、アタマで考えるなということか。バカボンのパパも、「これでいいのだ」と言っている。
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2022年04月26日

澤野工房物語

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もしジャズに関係する仕事をするのなら、マイナー・レーベルのプロデューサーになりたいと思う。若い頃はジャズ喫茶のオヤジに憧れたこともあったけど、いくら好きな音楽とは言え、大音量で一日中聴いていられるものではない。渋谷のJAROみたいな中古盤屋も実に良いと思うけど、仕入れて売るのくり返しは飽きっぽい自分には続かないと思う。ほれ込んだミュージシャンの演奏を、こう聴きたいという音で録音して、世に出すプロデューサーは最高だ。でもそれを続けるのは、並大抵のことではないと思う。作品を出し続けないといけないけど、何と言っても資金繰りが大変なのだ。

澤野工房の澤野由明さんは大阪の下駄屋さんに生れて、高校時代にジャズに開眼した。大学に進んだときの、お父上の「アルバイト禁止令」が面白い。「安易にカネを稼いだらあかん、きっちり遊んで社会勉強して来い」。つまりは「遊ぶだけ遊んだら、家に戻ってしっかり稼げ」ということで、催眠にかけているようなものだ。お父上の目論見通りに下駄屋を継いだものの、やはりジャズマニアになっていた弟さんが、フランス人の奥さんと渡仏してプータローになってしまった。弟さんの仕事を作るために、レコードの輸出入業務を副業で始めたのがきっかけとなって、ついにはオリジナル作品を数多くリリースするまでになった。

レコードの輸出入を始めて40年、そしてレーベルを設立して20年(なんと!、下駄屋の副業ですぞ)。澤野商会をクルマに例えれば「広告なし、ストリーミングなし、ベスト盤なし」の三ない方針を定めた兄がボディで、「とにかく動き回っているのが楽しいし、自分で足を動かさないと新しい出会いってやって来ないからね」の弟がエンジンか。ほのぼのとした語り口調に、澤野さんの素直で温かい人柄を感じる。ミュージシャン達との交流や、業界の裏話など、ジャズファンなら楽しめるエピソードが盛りだくさんだ。(DU BOOKS  disk union)
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2022年04月10日

ときめきJAZZタイム / ラズウェル細木

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1986年から「ジャズ批評」に連載されていた漫画を、単行本にしたもの。ラズウェル細木氏の「ラズウェル」は、トロンボーン奏者のラズウェル・ラッド(こりゃまた渋いというかニッチというか)からいただいた、もともとはこの漫画の主人公だ。こんな人です。木造アパートに住んでる独身男という設定だけど、1万5千枚も収納できるのかな?

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その後は「酒のほそ道」やウナギの漫画で知られるようになった細木さんだけど、もともとはジャズの知識とを活かした作品で世に出た人だ。哀しくも可笑しいジャズ・マニアの生態が描かれているけど、もうみんな実体験なんだもんね、きっと。

ジャズファンを任じる人だったら、隅々まで面白いと思う。ストーリーに関係ないところまで、ヒネリが効いている。クイズの賞品になった「チャーリー・パーカーの位牌」には「薬中院有戸居士」と書いてあったり。中古盤屋が「NIN-PI-NIN Record」(人非人とは、二束三文で買いたたかれた悔しさがにじみ出ている)だったり。レコードやCDなど、みんなパッケージ・メディアに熱中していた時代が懐かしい。
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2022年03月30日

クラシックジャーナル047 クラシックCD 最終形態としてのBOX (アルファベータ)

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「クラシックジャーナル」という雑誌が出ていたとは、知らなかった。ぼくはお勉強のようにジャズを聴かようとするのは「スイングジャーナル」で凝りていたので、「レコード芸術」も買ったことがなかった。この号が出たのは2013年の4月で、クラシックのボックスものがばんばん出ていた頃だった。裏表紙にあるワゴンがタワレコに置かれていて、頬杖ついたトスカニーニはCDが84枚にDVDがついて1万円を切っていた。それを横目で見ながら「どんな人が買うんだろう、すごいなー」と思っていたのが、数年後にはヤフオクやamazonで各種ボックスを漁るようになっていたのだから、人生何が起きるか分からないのだ。さすがにトスカニーニとか、フルトヴェングラーの107枚組とか、バッハなど作曲家別全集などは買っていないけど。

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こういったボックスものを買った人の多くは、すでに長年クラシック音楽を聴いて来て、コレクションのLPやCDがボックスにかぶっていたと思う。この本の対談で「お祭りに寄付するようなつもりで買う」と言った人がいたけど、まさにそんなところだろう。激安にされて忌々しくもあるけど、まだ聴いてないのがあれば聴いてみたい。単品のコレクションを処分すれば、省スペースにもなる。著作権切れやネット配信で終わりを告げようとしているCD時代の、有終の美を飾るお祭りでもあった。そしてどうやらこの「クラシックジャーナル」も、この特集で「最終形態」になってしまったようだ。

ジャズの方はあいも変わらず、旧録音は単発のCDでだらだらと売り続けている。浮き沈みの激しいマイナー・レーベルが多かったこと、あちこちのレーベルに録音したミュージシャンが多かったことも影響しているのだろう。たとえば「ブルーノート 1500番台 コンプリート」とかをボックスで出してくれれば、その多くをすでに持ってはいるけど、「お祭りに寄付するようなつもりで」買うと思う。それはトドメを刺すことになるのか、有終の美を飾ることになるのか、どっちなのだろう。
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2022年03月16日

文學界 2020年11月号 (第47巻 第11号)

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「文學界」は文藝春秋から出ている雑誌で、ジャズの特集をしたら異例の売れ行きだったと、話題になっていた。そのときに初めて「文學界」なる雑誌があることを知った。興味本位で買ってみたけど、いまどきこれだけ活字ばかりの雑誌があることに驚いた。ついでに古色蒼然とした「文學界」の下に描かれているのが「ビリー・ホリディ」だというのにも、驚いた。悪いけど、このイラストからはビリー・ホリディのカケラも感じられない。描いたイラストレーターが1984年生まれでは無理もない話で、文春とはそういう人に依頼するところなんだと思った。

お目当てはもちろん「総力特集 JAZZ×文学」の「村上春樹さんにスタン・ゲッツとジャズについて聞く」のインタビュー記事と、学生時代に熱中していた筒井康隆の「ダンシングオールナイト」だった。ぼくは村上春樹さんの小説について言えば熱心なファンではないけれど、彼が音楽、あるいは音楽を聴くことについて語るとなると、読まずにはいられない。この特集でも色々な人が色々なことを言っているけど、村上さんの「生で聴いた音の記憶はすごく大事」というくだりがいちばん残ったような気がする。

特集に関しては、ですね。やはりジャズはジャズ、文学は文学であって、無理やりかけ合わせて販売部数を伸ばそうとしたのだろう。どちらも中高年の好物だし、そういうこと語りたいと思っても語れる場がないのだ。自分が語るのではなくて、読むことで代償的な満足を得る人が多いということだ。
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