2021年09月03日

オラトリオ 森の歌

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交響曲第9番で窮地に陥ったショスタコーヴィチは、スターリンによる戦勝と植林事業を大絶賛することで浮上した。そんないわくつきの作品で、ソ連でもスターリンが批判されるようになってからは歌詞の一部が改変され、それでも演奏されることはめったにないそうだ。これは1949年の録音で、当然のことながらスターリン万歳のままで演奏されている。スタジオ録音でもやはり音は良くないが、それでも迫力を感じるし、歌唱も見事だ。

ボックス全体への感想としては、西側の良い録音でムラヴィンスキーの演奏に親しんだ人が、現地を発掘するような感じで聴くのには良いと思う。
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2021年09月02日

CD15 ショスタコーヴィチ 交響曲第12番「1917年」、交響曲第15番

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交響曲第12番はレーニンに捧げられており、体制にすり寄ったプロパガンダ作品ということで、あまり演奏されないらしい。でも聴いてみれば、技巧と聴き易さの両面を備えた普通の交響曲だ。ショスタコーヴィチは若い頃から着手していたらしく、窮地に追い込まれたときの安全牌として手元に置いていたのかもしれない。この次の第13番は(あるはずもない)ユダヤ人迫害を取り上げて当局と揉めた勝負曲で、その前に恭順の意を示していたのか。その第13番はこのボックスには入っておらず、あくまで「当局寄り」のボックスなのである。

第12番は1961年、モスクワでのスタジオ録音。弦の音が弦らしく、カサつかないで鳴っているし、しかもステレオである。ムラヴィンスキーが当局の言うことを聞いてソ連製の楽器を買っていたら、こんな音で録音してもらえたのだろうか。聴衆にとっては、輸入品の楽器で演奏してもらった方が幸せだったろうけど。なにせいまいましいのは、「ソ連」である。

第15番は「ウィリアム・テル序曲」を始めとして、自作曲も含めて、多数の引用がされている。第9番まで書いたら死ぬと言われた?交響曲を、第15番を書くまで生き永らえた人生を振り返っているように思われる。だったら、最終楽章はもっとスケールが欲しいと思う。これはムラヴィンスキーの解釈でそうなったのか? こっちは1976年レニングラードでのステレオ録音で、音質は1961年のモスクワより格段に落ちる。
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2021年08月31日

CD14 ショスタコーヴィチ 交響曲第11番「1905年」

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1957年、モノラル録音。表向きは革命を賛美するプロパガンダ作品でも、抗議と皮肉、嘲笑が込められていると捉えた方が妥当なのだろう。演奏ぶりはすさまじく、鬼気迫るものがあるが、何せ録音がよろしくない。カサカサと潤いのない弦楽器、ゴホゴホの咳き込み、そして遠慮ない物音にはげんなりしてくる。カラヤンと同時代に活躍したムラヴィンスキー、レコードの音質がカラヤンなみだったら……と思うと、ロシアに生まれた不運に思いが至ってしまう。それはショスタコーヴィチも同じで、圧政の中で魂を保っていた彼らの強靭さには敬服しかない。
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2021年08月29日

CD13 ショスタコーヴィチ 交響曲第10番

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スターリンはショスタコーヴィチの交響曲第9番に、ベートーヴェンの9番なみの圧巻ぶりを期待していたらしい。ところが発表されたのを聴いてみたら、軽妙でまるでお話にならず、激怒したと伝えられている。雌伏8年、スターリンの死後に発表されたのが、この第10番。第2楽章まではおどろおどろしいスターリン時代、そして第3楽章ではDSCH動機(ドイツ語での自身のイニシャルを音にした)を連呼しており、やはり解放された喜びをコッソリと表しているのかもしれない。ムラヴィンスキーの演奏は寒気がするような迫力だけど、1976年でも録音が良くないのが恨めしい。
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2021年08月27日

CD12 ショスタコーヴィチ 交響曲第8番

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同じく戦争をテーマにしていても、第7番は能天気なハ長調で書いて共産党指導部(スターリン)のお気に召した。この第8番は重苦しいハ短調で、そのあまりの暗さに演奏禁止の憂き目に遭ったらしい。でもこっちの方がショスタコーヴィチのホンネが透けて見えるような気がする。録音は1961年のモノラルで、演奏の凄味が伝わって来ないという意味では絶望的に悪い。1982年の録音も名演として有名なので、そっちを聴くべきなのだろう。

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