2023年01月25日

2023年2月号

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特集は「利きピアノ」。オヤジが好みそうな「利き酒」と、オヤジしか言いそうもない「聴き」との洒落が、なんともオヤジ臭い。音楽ソースに強い音楽之友社ならではの企画で、ピアノはたいがいの人が聴く楽器なので、目のつけどころは秀逸だ。とくに読み応えがあったのは、峰尾昌男さんの「ピアノを知る」、井上千岳さんの「ピアノ録音の実態」、そして飯田有紗さんがクラシック音楽のピアノを紹介した記事だ。飯田さんはピアニストの本質まで迫った紹介をしていて、演奏経験のある人はやはり違うと思わせる。片やジャズの方に目を向けると、さらっとなでてお終いの印象をもってしまう。せめてピアノ・ソロアルバムの名盤と録音について、まとめて欲しかった。

「木住野佳子が聴く ピアノが踊るスピーカー」は、ミドルクラスのトールボーイ機を5機種、聴き比べている。現実的なお値段の機種なのは好感が持てるし、同クラスの各メーカーの聴き比べということで興味をもつ人は多いだろう。ただタマ数は少ないとはいえ、テクニクス、ヤマハ、クリプトンと日本ブランドの製品も登場させて欲しいものだ。スピーカーの評価となると、木住野さんのような演奏家の言葉はちょっと物足りない。ふだんからこのクラスのスピーカーで聴いているリスナーを何人か募って、座談会形式でやる方が面白いかもしれない。

田中伊佐資さんの「音の見える部屋」に登場した、長野県の清水さん。世の中には、どエライ人がいるもんだ。元蒸気機関車の運転手が築いた5ウェイのホーンシステムは、部屋にぎりぎりで入った巨大サイズ。もともとは蒸気機関車の録音を聴きたいというこで始めたらしいが、仲間に頼まれたのもあって「60個くらいは」スピーカーを作りあげたそうだ。ホーンは理論的に設計されたものではなくて、たとえばしなる合板を手に入れたら何となくで作ってしまう。アンプは仲間に管球式を組んでもらい、音楽も聴きこむようになっている。この部屋の音は、ぜひ聴いてみたい。

ONTOMOショップの関係もあって、8〜10cmのフルレンジ、付録のデジタルアンプの改造対決と、こういうチマチマとした遊びは面白く読める。ただ8cmフルレンジと、100万円のカートリッジとどうつながるのか? 高額商品は、隅の方に小さく載せてもらえばシラけなくて良いのだけれど。ゼロの数がひとつ違うんじゃないかと思うような製品を見ると、ゲンナリする。これはぼくの周りのオヤジの総意だ。

「STEREO試聴室」には、アキュフェーズE-4000が登場した。E-480の税別55万円から、63万円と8万円のアップは幅が大きい。「バージョンアップの効果が明らかである」という評価が並んでいるのは、それだけメーカーが信頼されているということだと思う。オーディオに限らず、「人は思いこんだ通りに聴こえる」のだ。前モデルとの比較をするなら、ぜひブラインドでやってもらいたいと思ったりする。

角田郁雄さんの「イタリアン・サウンドの情景」では、CHARIOのスピーカーが2機種、紹介されている。ソナス・ファベールよりも創業が古いメーカーだけど、代理店があったりなかったりで、日本ではあまり流通してこなかったようだ。ブックシェルフの方は天板を廃したスタンド、フロアタイプは脚部に向いたウーファーと、趣向が凝らされている。デザインも「うちに置いたら、浮くんじゃないかな」と悩まずに済む、無難なものだ。

「今月の特選盤」では、石田善之さんが吉松隆の「カムイチカプ交響曲」を紹介していた。これは、買わないと。1枚でも新しい出会いがあると、モトをとった気になる。


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2022年12月23日

2023年1月号

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「増大特集」として、「ベストバイ・コンポーネント2022」。ふだんはパスしても、この号を買うだけの人もいるみたいだ。それで表紙にはこんなに大きく書かれているんだろうけど、アキュフェーズのパワーアンプA-300に和風の波?をあしらった出色のデザインを台無しにしている。「ベストバイ……2022」を小さくして、「本誌……」の白抜き文字を削除すれば、うんとスッキリしてしゃれたデザインになるだろうに、がっかりだ。

「ベストバイ」は、まあお高いものが多いですね。それを象徴している?のが「カートリッジ部門」で、エントリーグレードが「6万円未満」、その上が「15万円未満」、「50万円未満」、「50万円以上」と価格がランクアップして、一番高いのがフェーズメーションのPP-5000、なんと\1,485,000なのだ。200グラムもない塩ビ製の円盤から音を拾う消耗品に……常軌を逸しているというか、ここまでくると呆れて口あんぐりだ。DL-103もベストバイに入っていて\53,900(これも高くなったけど……)、じゃあオマエはDL-103の30倍エラいのかよ、と詰め寄りたくなる。「ベストバイ」であって、「モストハイ」ではないのだから、何とかしてほしい。オーディオ製品が高くなっていく事情は分かるし、ステレオ誌もメーカーから広告をもらいたいだろうけど、付録の8cmフルレンジキットの世界とどうバランスを取るつもりなのか? せめて「システムを組んだときに、プリウス一台分」くらいのラインに収めてみてはどうなんだろう。

面白かったのが、「いま買っておくべき 中古オーディオ ベストバイ・コンポ2022」だ。そこそこの値段でオーディオを楽しんでいる人には、アピールする記事ではないだろうか。製品群の写真を見てつくづく感じるのは、「よくこんなデザインの製品の写真を見て、うっとりしていたもんだ」ということである。メカメカ、ゴテゴテ、ピカピカ……な製品が目についてしまう。男子の好みであって、女子の好みではない。女性にオーディオが不人気だったのは、すっきり美しいデザインのものが少なかったからではないだろうか。家具のような感覚でオーディオがデザインされていたら、もうちょっと違う世界になったかもしれない。

「要注目! 最新サウンドバーの包容力」は良い記事だと思う。この頃の薄っぺらいテレビの音質に閉口しつつも、そうかと言って5.1チャンネルなんて御免こうむりたいと言う人は多いだろう。サウンドバーひとつ、あるいはサウンドバーとサブウーファーでそこそこ聴ける音になるのだったら、御の字なのだ。個人的にはテレビの両脇にスピーカーを置いて、2チャンネルにするのがいちばん実用的で聴き疲れしないと思うけど。NHKもいつまで5.1にこだわるのか、2チャンネルに回帰して欲しいものだ。

「いい音上田のオーディオさんぽ」で取り上げられたジャズ喫茶、TOMMY'S BY THE PARK は素敵な店だと思った。禁煙で飲みものだけのメニュー、レコードはなしでCDのみ、シンプルなオーディオシステムという割り切りが良い。オーナー氏はライヴを主催したり、「ジャズ批評」で評論を書いたり、アルバムをプロデュースするなど、音楽に携わる人としてバランスが取れているように思う。

紹介されていた製品で、個人的に聴いてみたいのはクリプトンのスピーカー、KX-3SXだ。「出したら出しっぱなしではなくて、熟成させていくのは素晴らしい」ということなのか、それとも単純に値上げするのが心苦しいからモデルチェンジをするのか。ぼくは値上げのためにディスコンにしてモデルチェンジするくらいなら、単純に値上げしていった方が良いと思う。その方が結果的にはモデルやブランドの価値を高めることになるし、ユーザーの負担も少なくなるのではないだろうか。
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2022年11月22日

2022年12月号

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特集は「思う存分ストリーミング」。こうなると思う存分どころか、ストリーミング再生に全く興味がもてないのでスキップするしかないのだ。まだ封を切っていないCDもあるし、聴いていないボックスセットもいくつかある。一度しか聴いていないLPやCDもけっこうあって、ソフトにはこと欠かないのだ。いまさらストリーミングを導入する意味がないのだから、手も足も出ないダルマさん状態だ。

ぼくだって見知らぬ人たちの作品を聴いてみたい、という気持ちはある。そうなったらYouTubeを開いて、テレビで観るのだ。アンプがつないであるのでオーディオの音にもできるけど、そこまでやらないことが多い。うちのテレビは三菱製で「ダイヤトーンの音」を売りものにしているだけあって、薄っぺらい液晶テレビの割にはそこそこの音を出してくれるから、これで十分なのだ。音だけのストリーミングよりは、ライブ映像を観た方が楽しめるし、どんな人たちなのかが伝わってくる。音だけのストリーミングは、いまのところ不要なのだ。

「いい音上田のオーディオさんぽ」に登場した、千葉県は東金市の「Jazz Bar カサブランカ」は下戸のぼくでも近くだったらぜひ行ってみたくなるようなお店だ。オーナー氏は奥さんに先立たれて、一人で老後を過ごすなら何かやった方がよいということで、78歳になってお店を始められたそうだ。孤立はどうしても老化を早めるから、こういう生き方は素晴らしいと思うのだ。スピーカーはアルテックのA7をキャビネットに収めた「マグニフィセント」、アンプはマッキントッシュの管球式と、心地好い音がしそうだ。菜の花の時期に房総にドライブするのも良いだろうな、魚も美味しいだろうし……と妄想が広がる。

「Stereo試聴室」では現実的なお値段のブックシェルフ・タイプのスピーカーが4機種、掲載されている。とくに「クアドラル」のは、トゥイーターの周りに拡散版?のようなものがついているし、ユニットも自社開発とのことで、ちょっと興味を惹かれる。そしてラックスマンのアナログ・ターンテーブルPD-191は、なんとも魅惑的な佇まいだ(インサイドフォースキャンセラーの「かんざし」だけ、ちょっと興ざめするけど)。PD-151は前面にスイッチがならんだ板金の筐体が何とも野暮ったいが、これだったら使ってみたい。……けどお値段が100万円と来た。こうなるともう高過ぎて、悩まないで良いのが有難いくらいなものだ。SAECのアームを使いたい人だったら、高額な海外製品よりもよほど良さそうだ。

ぼくが昨年末に購入したプリメインアンプ、アキュフェーズ E-480がモデルチェンジされていた。E-4000の型番がついて、さらなる高音質化が図られたとのこと。でも増幅素子はMOS-FETからバイポーラトランジスタに変更されているし、定価は\550,000から\693,000へと2割以上のアップとなっている。これではさすがに評論家のセンセイも、「価格以上のクォリティアップ」とは書けないだろうなあ。値上がりはこういうご時勢だから仕方ないのだろうけど、良い時に買っておいたとつくづく思ってしまう。

オーディオデザインのプリメインアンプ、DCPMA-100REは\605,000の新製品だ。もとからプリメインアンプはラインナップされていたけど、これはフォノイコライザーを積んでリモコンでの操作が可能になっている。同社製の製品はセレクターを使っていたことがあるが、造りがしっかりしていて全く音の劣化を感じなかった。こういう清潔なデザインも良いと思う。

クリプシュのスピーカーを、TEACが販売するようだ。以前はヤマハが代理店だったと思う。イマ風のトールボーイやブックシェルフもホーンが採用されていて、大型の古典的なホーンシステムもラインナップされている。ハードロック・カフェ御用達ということで、細かいことにこだわらない、大らかな音がするのだろうか。
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2022年10月22日

2022年11月号

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大理石に鎮座して「CD再考」のタイトルがかぶっているのは、ラックスマンのSACD機D-07X。お値段が¥825,000なのである。この写真があまりにも衝撃的だった。15万円、20万円のキカイだったら分かるけど、これじゃあね。ぼくが最初に買ったCDプレイヤーは、まだ「物品税」がかけられていた時代のパイオニア PD2000だった。10万円弱だったと思うけど、こんなスッカスカではなかったと思う。シャーシが銅のハニカム構造になっていて、回路構成も相当に凝ったものだった。

もちろん、「音さえ良ければ良いじゃないか」という話もある。部品を選ぶのに時間をかけたのであれば、部品数は少ない方が音が良くなるのかもしれない。でも、それでも、何だか割り切れない。この配線はちょっとブザマじゃないだろうか。基盤の上をケーブルが這っていて、コネクタで留められているのは、見た目が美しくなければ、良い音がしそうにないと思ってしまう。この時代にCDプレイヤーを出すラックスマンには敬意を表するけど、どうせ高級機を出すなら配線や表示(ドット文字は見づらいし安っぽい)の美しさにもこだわって欲しかったと思う。

CDに光があてられるのは、「円盤爺」のぼくにはうれしい企画だ。トライオードのTRV-CD6SEが好評で販売も伸びているということだし、アキュフェーズCD-450は高い評価が与えられている。またライントランスを通して聴くのは、ニッチなところをついてくれた。ぼくは2つほど試してみたけど、デジタルの嫌なところと良いところ、両方を消してしまうような気がしてやめてしまった経験がある。でもCDの音では満足できないという方は、試してみる価値がある。

いちばん興味をひかれた記事は、「スウェーデン発 音楽没入型スピーカー ラーセンの音に溺れる」だった。和室に置かれたゴミ箱(ゴメン)みたいなスピーカーなんだけど、記事は「音を分析する余地を一切与えない、ただひたすら音楽を聴かせる究極の理想的なスピーカーだった」とまとめられている。値段もベラボウに高くはないし、どんな音なんだろうと気になる。

「Stereo視聴室」では、フィデリックスのMCカートリッジ、エラックのアナログターンテーブル、アイオンの真空管アンプ、ファルコン・ラボとクアドラルのスピーカーが取り上げられていた。ファルコン・ラボのD102は、ペア19万円で25cmのウーファーとホーンツイーターの2ウェイ機だ。頑張っているなあと思うし、こういう製品が増えてくれると、オーディオに入ってくる人も増えるのではないだろうか。ただ使いこなしにしが難しいようで、辛い点をつけている人もいる。

「いい音上田のオーディオさんぽ」では横浜の老舗ジャズ喫茶、「down beat」が取材されていた。アルテックのA7が置かれていて、心ゆくまでジャズを楽しめそうだ。現在の店主は三代目で、先代から見込まれたのを機にサラリーマンを辞めて継いだそうだ。やはり人生の偶然は、必然なのだろうか。こういうお店は、客層も良いのではないかと思う。

ぼくが中学生だったか、CCRというバンドがあった。「雨を見たかい」が大ヒットしていた。「クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル  ライヴ・アット・ロイヤル・アルバート・ホール」の音源が蘇って、発売されるらしい。音楽を愛する人たちによって過去の音源が世に出るという話は、なんとも嬉しい話だ。
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2022年09月21日

2022年10月号

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どうです、この写真。カートリッジのメタル感、周囲の光の落ち方やボケの具合、見事としか言いようがない。このカートリッジはオーディオテクニカのAT-ART20で、330,000円らしい。MCカートリッジが30万しても、もうすっかり耐性がついているので何とも思わないけど、手ごろな価格帯で勝負してきたメーカーだけに裏切られたような気分にもなってくる。同社のカートリッジは何個も買っているのだから、「裏切られた」と言う権利?は、あるような、ないような。

さて特集は「アナログレコードが出来るまで」で、かなりニッチなところを攻めている。マスターテープから塩化ビニールの円盤まで、どんな過程があるのか興味がそそられる人は……いるのかもしれない。ぼくにしてみたら、アナログLPの歪みを証明するようなものだと思う。何しろカッティング・エンジニアが刻んだラッカー盤(凹)→メタルマスター(凸)→メタルマザー(凹)→スタンパー(凸)→レコード盤と、つまりは5回の物理的な変容を遂げているのだ。溝の刻みがそのたびに微妙に変わって、音が歪んでいくことは容易に想像ができる。その歪みがヒトの耳には、心地良く聴こえることもある……のだと思う。

だから……エソテリックの770万円(アームつき)のアナログ・プレイヤーとか、いくら何でもやり過ぎじゃないかと思ってしまうのだ。同じくエソテリックが輸入しているアヴァンギャルドの3000万円台のスピーカーもそうだけど、「できたら導入したい」という夢にすらならないのでは白けませんかね。同誌には「トランジスタ技術」や「共立エレショップ」とコラボした「MCカートリッジ用ヘッドアンプ」\15,400が掲載されていて、シェルにバッファアンプが乗っているのは面白ろそうだ。こういうのは、面白いんだけど……。トータルでせいぜい車一台分、その程度でオーディオ機器を作る努力をして欲しいし、そういうものを紹介して欲しい。車だってうんと高いのはブガッティとかあるけれど、アラブの石油王しか買えないんだから。

「STEREO試聴室」ではデノンのプリメインアンプ、PMA-900HNE 132,000円が紹介されている。フォノイコライザーもネットワークもデジタル入力も積んでいて、オールマイティに使える一台で、これからオーディオを本格的にやってみたいという人には良いのではないだろうか。エラックのスピーカー UFR52 \297,000もそうだけど、庶民にも手に入る機種が評価の対象としてまっとうな位置にあるのを見ると、ホッとするのだ。おカネのことばかり言っているのも情けないけど、オーディオが大勢の人たちで楽しめるものになって欲しい。

いちばんに読み応えがあった記事は、「セイジ・オザワ松本フェスティバルの舞台裏 〜バランスエンジニア深田晃の録音現場に迫る」だった。執筆は渋谷ゆう子さんで、音楽の現場を広く深く知らないと書けない記事だと感じた。峰尾昌男さんの「火の鳥電機」とキヨトマモルさんの「クラフト・ヴィンテージ」は相変わらず勢い良く突っ込んでいて、興味のある人にはたまらない記事だろう。あとだれとは言わないけど、惰性でだらだら書いているとしか思えない人たちもいて、何だかなあと思ってしまう。みんなジイさんだから仕方ないのか? 「あんたがジジイなんだから、人さまををジジイと呼ぶんじゃない」と妻に言われる昨今でございます。
posted by あおのり at 22:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽之友社 月刊 stereo