
著者の川島良彰氏は静岡のコーヒー屋に生まれ、高校を卒業してすぐに生産国のエルサルバドルに渡った。表向きは留学でも、徒手空拳で国立コーヒー研究所に押しかけて研究生になった人だ。UCCの創業社長に見込まれて、ジャマイカ、ハワイ、インドネシアで農園開発を行う傍ら、栽培されなくなった品種を復活させて「コーヒーハンター」としても名をはせた。いまは「ミカフェート」を経営して、生産地と消費地を結ぶ活動をしている。目指すところは、「美味しいコーヒー」を通じて生産者と業者がウィン・ウィンの関係になり、産地が報われてゆくことだと推測する。
暴露本のようなタイトルだけど、コーヒー好きにはとくに驚くことはない。「まあ、そうだろうな」と思うようなことが淡々と、誠実な態度で書かれている。でも多くの人が肝心なことを知らないまま、「コーヒーなんて、こんなもんだよね」とマズイのを飲んでいるし、それを良いことにマズイものを提供しつづける店もある。いや店の人も、コーヒーは鮮度が第一なことを知らないで出している。
川島さんも鮮度が第一なことは知っているはずなんだけど、正直に暴露していないのは、どうしたことか。寅さんが「それを言っちゃあ、オシメエよ」と言うから、なのか。コンビニコーヒーが美味しい理由を「挽きたて淹れたて」と言っているが、実は「煎りたて」が一番の理由だろう。大手ロースターのコーヒーは、焙煎してから流通センターに運び込まれるまでに1か月かかるそうだ。コーヒーは焙煎してから2〜3週間、挽いてしまったらその日のうちが賞味期限、でしょ?
新鮮なコーヒーを流通させれば、みんなもっとコーヒーが好きになって、コーヒーを大事にすると思う。そのためには、豆のまま冷凍で流通させるべきだろう。「冷たいまま開けたら、結露してダメになるからできない」は、消費者をバカにした言いわけだと思う。ハーゲンダッツのアイスクリームが全国どこでも買えるのに、冷凍のコーヒー豆が買えないのはおかしい。