
マーヴィン・チャールズ・ピーターソンはライヴハウスに出演中、見ず知らずの男から「お前はハンニバルだ」と告げられて、その通りに改名してしまった。ハンニバルとは紀元前にローマ帝国からも恐れられたカルタゴの猛将で、象に乗って敵を蹴散らしたという。図太い音色とハイノート、循環呼吸で容赦なく吹きまくるスタイルは、「ハンニバル」に相応しい。「フュージョン」全盛だった時代に、こんなに熱いジャズをリリースしているところからして、尋常ではない。
つきあっているのはジョージ・アダムス(ts, fl)、ディドル・マレイ(cello)、スティーヴ・ニール(b)、マカヤ・ンショコ(ds)。アナログ時代だったらLPの片面に一曲ずつという、コルトレーンの衣鉢を継ぐような呪術的なモード奏法。ジョージ・アダムスは粘っこく暑苦しく迫り、ンショコは異能のポリリズムを叩き出し、マレイは摩訶不思議を創り出して、ニールは突っ込みながら支え続ける。全員が良い仕事をしているし、元気をもらえる。(Hannibal In Antibes / Hannibal Marvin Peterson 1977 Enja)
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