2022年06月20日

イン・アンティーブ / ハンニバル・マーヴィン・ピーターソン    CD

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マーヴィン・チャールズ・ピーターソンはライヴハウスに出演中、見ず知らずの男から「お前はハンニバルだ」と告げられて、その通りに改名してしまった。ハンニバルとは紀元前にローマ帝国からも恐れられたカルタゴの猛将で、象に乗って敵を蹴散らしたという。図太い音色とハイノート、循環呼吸で容赦なく吹きまくるスタイルは、「ハンニバル」に相応しい。「フュージョン」全盛だった時代に、こんなに熱いジャズをリリースしているところからして、尋常ではない。

つきあっているのはジョージ・アダムス(ts, fl)、ディドル・マレイ(cello)、スティーヴ・ニール(b)、マカヤ・ンショコ(ds)。アナログ時代だったらLPの片面に一曲ずつという、コルトレーンの衣鉢を継ぐような呪術的なモード奏法。ジョージ・アダムスは粘っこく暑苦しく迫り、ンショコは異能のポリリズムを叩き出し、マレイは摩訶不思議を創り出して、ニールは突っ込みながら支え続ける。全員が良い仕事をしているし、元気をもらえる。(Hannibal In Antibes / Hannibal Marvin Peterson   1977 Enja)
タグ:ENJA
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2022年05月15日

ダイアリー / ラルフ・タウナー    LP

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ECMからリリースされた、ラルフ・タウナーの二枚目のアルバム。6弦のクラシック・ギター、12弦ギター、ピアノ、パーカッションによる演奏で、多重録音も使われている。浮き上ってくるのはタウナーが、とても優れた作曲家であるということだ。おそらくタウナーのアイデンティティは作曲家にあって、ECMでの諸作品やグループ「オレゴン」の活動は、自作曲のプレゼンテーションではないだろうか。

トリオレコードのLPには、故野口久光先生のライナーノートがついている。「彼が従来の一般的な常識、通念によるジャズの形式、演奏方法にこだわっていないこと、ジャズもまたクラッシック系の現代音楽、広義のコンテンポラリー・ミュージックの一翼を担うべきものだという発想、姿勢、演奏行為から生み出された音楽であるということである」−−その後の50年間のタウナーの軌跡をながめると、まさにその通りだと思う。野口先生の慧眼、畏るべしというべきだろう。(Diary / Ralph Towner   1973 ECM)
タグ:ECM
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2022年05月08日

グリーン・シェイディング・イントゥ・ブルー / アリルド・アンデルセン    CD

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メンバーはユハニ・アールトネン(ts, ss, fl)、ラーシュ・ヤンソン(p, synth)、アリルド・アンデルセン(b)、ポール・トーセン(ds)で、やはり北欧勢による録音。5曲がアンデルセン、2曲がヤンソンによる自作曲となっている。このアルバムはCD化されないままだったけど、3枚組のボックスになって陽の目を見た。お蔵入りだったのはメインストリームなフュージョン、たとえばチック・コリアのリターン・トゥ・フォーエヴァーに近いものがあって、わざわざ「ECM」を冠して再発するまでもないという判断があったのではないだろうか。

ただしいくら「フュージョン」に近いとは言っても、ひたすらグルーヴに頼るとかキメ技に走るというようなことはなく、口当たりが軽くて聴き易いかな、という感じだ。タイトル通りにしっとりした陰影を感じるのは、ヤンソンが操るシンセサイザーが雰囲気を作っているからだろう。CDでデジタルになっているけど、アナログ録音ならではの厚みや温度感が詰め込まれているように思う。(Green Shading Into Blue / Arild Andersen Quartet  1978 ECM)
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2022年05月01日

シムリ / アリルド・アンデルセン     CD

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アリルド・アンデルセン(b)の3枚組ボックスの一枚。つきあっているのはユハニ・アールトネン(ts, ss, fl)、ラーシュ・ヤンソン(p)、ポール・トーセン(ds)の面々で、ヤンソンしか知らなかった。ほとんどがアンデルセンの自作曲で、アールトネンはロリンズばりの豊かなトーンでサックスを吹くし、気合の入ったフルートは出色だ。アンデルセンのベースも温かい音色でたっぷり響いており、70年代ECMの耽美系録音ではあってもホットな印象を受ける。それがためにCD化されていなかったのかもしれないけど、アルバムとしての出来は良く、濃密な音空間に浸ることができる。(Shimri / Arild Andersen   1976 ECM)
タグ:ECM
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2022年04月30日

ネイチャー / 板橋文夫     LP

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A面は板橋文夫(p)、望月英明(b)、亀山賢一(ds)のピアノ・トリオで、望月さんの重厚なベースと亀山さんのビシバシ決まるドラムスに乗っかって、板橋さんは快調に飛ばす。そして絶品のバラード「リッスン・トゥ・マイ・ストーリー」で閉じる。B面は大自然をテーマに、大友義雄(as)、古沢良次郎(ds)、初山博(vib)、山崎弘一(b)が加わる。14分弱に及ぶ「マクンバ」は圧巻だ。終曲の「アッシュ」は寂寥感が漂い、余韻を残して消えていく。30歳でこれほどのアルバムを作った板橋さんのピアニスト、作曲家としてのスケールの大きさをあらためて感じる。録音はドラムが大き過ぎると感じる人もいるだろうけど、ライブハウスで聴いているときのバランスに近くて好ましいと思う。(Nature / Fumio Itabashi  1979 Better Days)
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