2022年12月17日

ルビサ・パトロール / アート・ランディ    LP

rubisapatrol.jpg

アート・ランディ(p)は、「ルビサ・パトロール」というグループを作って活動していた。つきあっていたのはマーク・アイシャム(tp, flh, ss)、ビル・ダグラス(b, fl)、グレン・クロンハイト(ds, pec)の三人で、ECMには二枚のアルバムを残している。マーク・アイシャムという人はローリング・ストーンズやジョニ・ミッチェル、ヴァン・モリソンなどのアルバムにも参加しているが、映画音楽が本業でシンセサイザー奏者でもあり、1990年にはグラミーを受賞している。トランペットの澄んだ音色はローノートでも失われておらず、相当なテクニシャンだと思う。

定型的なジャズを足場にして、民族音楽を探索しているような感じだ。「ルビサ」は中近東を原住民とともに探検した、アルフォンス・ルビサからとられたそうだ。退屈に思う人はいるだろうけど、ハマる人はハマる。とくにお終いの「A Monk In His Simple Room」は言葉に尽くしがたい静寂と美を感じさせる演奏だと思う。録音はオスロのタレント・スタジオで、ECMらしい透明感と響きを感じさせる。(Rubisa Patrol / Art Lande   1976 ECM)
タグ:ECM
posted by あおのり at 18:06| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ 1970年〜

2022年12月05日

インプロヴィゼーションズ / グローブ・ユニティ・オーケストラ   LP

improvisations.jpg

渡り鳥は北西(ヨーロッパ)を目指す。このジャケットに惹かれて買ってしまった。アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ(p)、マンフレッド・ショーフ(tp)、ケニー・ホイーラー(tp)、アルバート・マンゲルスドルフ(tp)、ポール・ラザフォード(tb)、ギュンター・クリストマン(tb)、エヴァン・パーカー(ss, ts)、ゲルド・ドゥデク(ss, ts, fl)、ペーター・ブロッツマン(as, ts, bcl)、ミシェル・ピルズ(bcl)、トリスタン・ホンジンガー(cello)、ペーター・コヴァルト(tuba, b)、デレク・ベイリー(g)、ブッシ・ニーベルガル(b)、ポール・ローヴェンス(ds)と、総勢15名のグローブ・ユニティ・オーケストラ。ドイツのトンスタジオ・バウアーでの録音だけど、ECMの傍系レーベル、JAPOから発売されている。ECMのディストリビューターだったトリオレコードは、律儀にも「TRIO」ではなく、傍系レーベル?の「NADJA」として発売している。

「NADJA」って「NANJA」のもじりではないのか。「なんじゃコレは?」の不思議というか、迷惑なというか、そういう音楽だ。ヨーロッパの人たちはフリー・フォームになると、徹底して自分勝手になる印象だ。耳障りのよいメロディをカケラにして押し込んだり、混沌から構成を作り上げたり、決め技を織り交ぜたりはしない。「合わせてはいけない」でやっているとしたら、それはフリーとは言えないのではないか……なんて意地悪な考えも浮かんでくる。インプロヴァイザーとして名を成した人たちが参加しているので、資料的価値はある。あるいはこれをカラオケにして叫ぶとか、ノイジーなギターをかき鳴らすなどしたら発散できるだろう。時代が生んだ、いまとなっては望むべくもない一枚かもしれない。(Improvisations / Globe Unity Orchestra   1976 Japo)
posted by あおのり at 07:55| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ 1970年〜

2022年12月03日

ソロ / ジミー・レイニー    LP

jimmyraneysolo.jpg

ジミー・レイニー(1927〜1995)も、息子のダグ・レイニー(1956〜2016)ともに、優れたジャズ・ギタリストだった。親父は偉かったが息子は……のパターンではなかっただけに、ダグの早世(心不全)こが惜しまれる。ジミー自身もアルコール依存症で引退していた時期があり、これは復帰してからの作品だ。プロデューサーからソロ・ギターのアルバムにしようと提案されて、考え込んでしまったそうだ。「ギター1本で40分は長すぎる!」と。

ジョー・パスのように、コードもベースラインも1本でホイホイ弾くスタイルを持ち合わせていなかったということだろう。それはジミーのテクニックがないということではなくて、あくまでシングルトーンで妙味を聴かせるタイプだったからだろう。5度低くチューニングした「Fギター」(バリトンギター?)と、多重録音によるデュエットを聴かせる曲もある。もちろんギター1本で勝負している曲もあって、ファンとしては色々聴けた方が楽しいに決まっている。しみじみとした、滋味(ジミー)にあふれたアルバム。(Solo / Jimmy Raney   1976 Xanadu)
posted by あおのり at 16:56| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ 1970年〜

2022年11月23日

スペシャル・エディション / ジャック・デジョネット    LP

specialedition.jpg

これは学生時代から、何度も聴いてきたアルバム。ジャック・デジョネット(ds, key)がリーダーとなり、アーサー・ブライス(as)、デヴィッド・マレイ(ts, bcl)、ピーター・ウォーレン(b, cello)がニューヨークのロフトから熱気を吹き込んでくるような、ECMらしからぬ傑作。デジョネットは売れっ子ドラマーになっていたし、大物を集めたこともあって、どうしても「別冊」扱いにならざるを得なかったようだ。この後もメンバーを入れ替えながら作品を発表したが、この作品のインパクトが強すぎてかすんでしまった。コルトレーンのカバーを2曲、そしてデジョネットが書いたオリジナルが3曲と気合も入っていて、サックスのブロウも弾けている。(Special Edition / Jack DeJohnette   1979 ECM)
タグ:ECM
posted by あおのり at 20:24| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ 1970年〜

2022年11月08日

心の瞳 / キース・ジャレット     2LP

eyesoftheheart.jpg

いつかCDを買おうと思いつつ、まだ買っていない一枚。キース・ジャレット(p, ss, perc)、デューイ・レッドマン(ts, perc)、チャーリー・ヘイデン(b)、ポール・モチアン(ds, perc)の、アメリカン・クァルテットによる、オーストリアはブレゲンツのライヴ。ぼくが持っているのは、アメリカ盤だ。若いときはドイツ盤でも、アメリカ盤でも、日本盤でも、とにかく聴ければ良かった。

A面がPart1で17:11、B面がPart2で15:43、C面がアンコールの18:03となんとも収まりの悪い構成で、発売当時は油井正一さんだったかな、評論家が憤懣やるかたない思いを雑誌にぶちまけていた。しかもPart1は終わりまでなくPart2も始りからない、つまりはつながっていない。何かハプニングがあって、聴けるところだけを編集したのかもしれない。ECMにしてはまるでなっていない編集だけど、ECMだから日の目を見たのかもしれない。

打楽器を多用していることからも想像されるように、演奏は粗削りで野蛮で、およそECMのテイストからはかけ離れている。キースもソプラノ・サックスを存分に吹いている。ネットで拾った情報によると、デューイ・レッドマンがソロを吹いてから、ステージに戻って来なかったようだ。キースが後で聞いたら「ワインを一杯やりに行っていた」そうで、デューイが「肝機能障害」で亡くなったことも勘案すれば、おそらくはアルコール症だったのだろう。自分より二回り上のデューイを持て余したキースの苦悩は推して知るべしで、アメリカン・クァルテットの活動は終焉を迎えることになる。情念を吹き込んでいたデューイ・レッドマンの演奏そのものは悪くない。(Eyes of The Heart / Keith Jarrett   1976 ECM)
タグ:ECM
posted by あおのり at 10:33| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ 1970年〜