
ディジー・ガレスピー(tp, 1917〜1993)はチャーリー・パーカー(as, 1920〜1955)とともに、ビバップを立ち上げたとされる偉大なミュージシャンだ。二人の仲は決して良くなかったらしいが、謹厳実直なガレスピーとおクスリでヘロヘロのパーカーではソリが合うはずもなかったということだろう。ガレスピーはクリーンに暮らしたおかげで、長寿を全うした。上向きのトランペットを、頬をカエルのように膨らませて吹くのがトレードマークだった。Avid Jazzの2枚組4アルバムをまた買ってしまったのは、実はディジー・ガレスピーのレコードはニューポートのライブ1枚きりしか持っていないからだ。これを機会に、じっくり聴いてみようという気になった。

Avid Jazzの1枚目は「フォー・ミュージシャンズ・オンリー」で、それは「素人さんお断り」ということか。ミュージシャンが自分たちのために好きなように演ったので、そういうのでも良ければ聴いてくださいという、そそられるタイトルだ。パーソネルはディジー・ガレスピー(tp)の他に、スタン・ゲッツ(ts)、ソニー・スティット(as)、ジョン・ルイス(p)、ハーブ・エリス(g)、レイ・ブラウン(b)、スタン・リーヴィー(ds)と、申し分のない名手の顔合わせだ。
聴かせどころは、何と言ってもホーンの三人のソロであって、それぞれに気迫のこもったブロウを聴かせてくれる。スタン・ゲッツはスイング時代から活動していた人だけど、ビバップとはひと味違うスタイルで急速調のバップ・ナンバーを吹きこなしている。ガレスピーが飛び跳ねても「ガレスピーだね」、スティットがにょろにょろしても「スティットだね」で終わってしまうのに、ゲッツは凄い。カミソリのような切れ味と、メロウなトーンが両立している。もちろんガレスピーもスティットも熱く燃えて素晴らしいプレイなのだけど、ちょっと場違いな感もあるゲッツが天才ぶりを発揮している。エリスも「チャカポカ」をやらないで、気迫のリズムを刻んでいる。全員がここまで熱演しているレコードも、珍しい。(For Musicians Only / Dizzy Gillespie - Stan Getz - Sonny Stitt 1956 Avid Jazz)