
これはいただきもの。1991年公開の特撮怪獣映画のサウンド・トラックで1枚目は音楽のみ、2枚目は「ドラマ編」でセリフも入っているが、場面説明がないのでサウンド・ドラマまでは仕立てられていない。伊福部は1975年の「ゴジラの逆襲」を最後に、「コミック調になった」ゴジラの音楽からは遠ざかっていた。多重録音と編集が全盛の時代にあって、大スクリーンの映画を見ながら演奏する旧来の手法による録音が実現し、伊福部もその出来に満足したのか、その後1995年の「ゴジラ vs デストロイア」までの3本を作ることになった。
伊福部が映画音楽を作るときには編集前のフィルムも全て目を通し、演奏時には倍の長さの指揮棒を用いたらしい。手抜きせずに映画音楽に徹することで、「音楽」の質を高めていたのではないだろうか。スタジオで編集されていないこともあってか、音響的にもビビッドだ。