
「ケルン・コンサート」の一年後に発売された。キースがフランスで映画音楽の仕事をしているときに、どうしても弾きたくなってスタジオに飛び込んで録音したという作品。A面「ステアケース」、B面「アワーグラス」、C面「サンダイアル」、D面「サンド」と、それぞれが2〜3曲で構成されている。小品集の趣きがあるが、あらかじめモチーフが用意されていたのかもしれない。ライブ盤のように、瞑想で高みを目指すような感じはあまり受けない。印象に残るのは、地中海気候の乾燥した空気と、まぶしい光だ。……と聴いているうちに、終わりの「サンド パート3」がコーダ(終結)になっていることに気づく。小品集というよりは、組曲と呼んだ方が良いのかもしれない。
このアルバムは学生時代に買って、さんざん聴いてきた。扱いがぞんざいだったせいもあって、チリが溝にこびりついている。クリーニング液とペーパーで掃除をしても、ちょっとやそっとではノイズが取れない。CDも持ってはいるけど、どうしたことかピアノの音色が突き刺さるように感じられて閉口する。こういうときには、オルトフォンのSPU#1Sの出番だ。4グラムの針圧と丸針のおかげで、ノイズがかなり減ってくれる。レンジは狭いけれど、艶とコクのある音。これはこれで良いものだと思う。(Staircase / Keith Jarrett ECM 1977)
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