
レヴァインはメトロポリタン歌劇場に君臨し、晩年はセクハラ疑惑で解雇された後に、名誉棄損と契約違反でメトロポリタン側を訴えて巨額の和解金を受け取っていた。そんなことを知ってしまうと、ちょっと聴くのも萎えるけど、音楽は音楽だ。
表題曲の他に「キューバ序曲」、「キャットフィッシュ・ロウ」(「ポーギーとベス」から)、「パリのアメリカ人」を収録。レヴァインの弾き振りによる演奏で、いわばピアノもオーケストラも自分の楽器として音楽を奏でている。ソリスト、指揮者、オーケストラの三者の出会いによる反応がなくて物足りない、という見方もできるだろうけど、まとまりの良さや一体感を味わうべき演奏なのだろう。録音もクリアで、ダイナミック・レンジが広い。「ラプソディー・イン・ブルー」は、やはりジャズ・ピアニストがソロを弾く方が楽しめるけれど、譜面に忠実な演奏の中では素晴らしい出来だと思う。(1993年)
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