2023年02月28日

ストックホルム・セッションズ / エリック・ドルフィー    CD

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顔写真のジャケットなのにインパクトが大きいのは、見上げたアングルだから、だけではないだろう。ドルフィーは、どこを見据えているのか? 学生の頃に通った池袋西口のジャズ喫茶「ジャンゴ」では、これがパラゴンの上に飾られていたし、よくかけられてもいた。「かくれ名盤」を知らしめる意味も、あったのかもしれない。

アイドリス・シュリーマン(tp)の他は、現地のピアノトリオとの組み合わせで、ドルフィーはアルトサックス、フルート、バスクラリネットを吹き分ける。ライヴではなくてスタジオセッシ送音源だったのか、録音はあまり良い部類ではないけれど。内容は素晴らしい。この現地トリオは相当に巧いけど、オーソドックスで流れるような演奏をする。だからこそ、ドルフィーの疾走ぶり、いななきぶり、わめきぶりが余計に前面に出て来るという仕組みだ。「Alone」と題された曲は「レフト・アローン」で、ドルフィーはフルートで泣いている。(Stockholm Sessions / Eric Dolphy   1961 Enja)
タグ:ENJA
posted by あおのり at 19:40| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ 1960年〜

2023年02月27日

Symphonies CD4 ベートーヴェン 交響曲第3番「エロイカ」

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1987年4月の録音。演奏時間が57:07と、こうゆっくりだと弦の人とかつらいんじゃなかろうか。出だしもいきなり横っ面を張り倒す勢いではなくて、優しく入ってくる。幽玄なたっぷりした響きは終楽章まで変わらず、骨の髄までしゃぶり尽くすような深堀りに耽溺できる人は幸せだ。単調だと捉える人もいるだろうし、好みが分かれると思う。録音がいまひとつで楽器の分離が良くない感じで、またニアフィールドのセッティングもマイナスに作用していると思う。
posted by あおのり at 09:22| Comment(0) | TrackBack(0) | Sergiu Celibidache

2023年02月26日

橋 / ソニー・ロリンズ     CD

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ソニー・ロリンズ(ts)は共演者に注文をつけたり、ダメ出しをしない人らしい。そして気に入らなくなると「もう来なくて良いよ」と言い出すとか。それはこのアルバムで共演しているジム・ホール(g)が語ったことで、とても気を遣うのだとか。だからジム・ホールなんだけど、事務的には弾いていない。テキトーにコードを弾いているコンピングなど、1小節もないのだ。他につき合っているのは、ボブ・クランショウ(b)とベン・ライリー(ds)、1曲だけH. T. ソンダース(ds)。

ロリンズは2回目の隠遁(おクスリがからんでいたらしい)から復帰しての、第1作目。アドリブも冴えていて、モリモリとフレーズが湧いてくる。タイトル曲は、橋の下で練習をしていたことにちなんでいる。ロリンズはときおりピアノでコードに縛られるのを嫌って、ギターを使ったり、ピアノレスのトリオで演奏したりするけど、これはジム・ホールにとっても代表作と言えるアルバムになった。(The Bridge / Sonny Rollins   1961 RCA)
タグ:RCA
posted by あおのり at 19:44| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ 1960年〜

2023年02月25日

CD45 展覧会の絵 / ムソルグスキー

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モデスト・ムソルグスキー(1839〜1881)は、音楽史の中心にいた人ではない。酒浸りの生活を送ったうえに早世したこと、役人をしていたこともあって、作曲に費やす時間は限られている。それでもこの「展覧会の絵」と「はげ山の一夜」が、今日でも音楽の教科書に載ったりCMに使われる形で残っているのは、メロディ・メーカーとしての才能があったからだろう。たとえばの話、日常的にテレビで流れてみんなが知っているブラームスの曲って、あるのだろうか。

この盤はラヴェルが編曲したオーケストラ版(指揮はユーリ・テミルカーノフ、1980年)の次に、ニコライ・ペトロフが弾く原曲(1974年)が収録されている。オーケストラはテミルカーノフがシェフを務めたレニングラード・フィルではなくて、寄せ集め部隊なのか、統制がうまく取れていない感じがする。爆演と言えばそうなのだけど、トランペットの人は荒れていないか? ホルンは良い味を出していると思う。聴きごたえがあるのはピアノ版の方で、こっちを後に持ってきた編集者の意図も分かる感じだ。ピアノ一台でめくるめく世界を作り上げたムソルグスキーはやはり天才だと思ってしまう。
posted by あおのり at 08:29| Comment(0) | TrackBack(0) | Legendary Soviet Recordings

2023年02月24日

ハイ・アート / ザ・パワー・クインテット    CD

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ジェレミー・ペルト(tp)、ダニー・グリセット(p)、ピーター・ワシントン(ds)、ビル・スチュワード(ds)、スティーヴ・ネルソン(vib)による、クインテット。マルグリュー・ミラー(p)が亡くなってから3年後の録音で、ミラーとつながりのある人たちのグループらしい。もちろんみんな上手なんだけど、いまひとつパッと弾けるような、あるいは呻くような、そういうはみ出しがない。ジャズのフォーマットに乗っかってはいるけど、スピリット的にジャズなんだろうか。そこに鬼神ドラマーのビル・スチュワートが煽ったり、カツを入れたりするものだから、ますますチグハグな感じになってしまう。上手いんだけど、どうも変だなあ……と感じてしまう、後味の悪さが残る。(High Art / The Power Quintet   2016 High Note Records)
posted by あおのり at 16:57| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャズ 2010年〜