サブシステムのスピーカーは、ウーファーの口径が10cmしかない。ジャズやロックは良いかもしれないけど、大編成のオーケストラは聴けたもんじゃないだろう……と思う人が多いと思う。とくにサン・サーンスの「オルガンつき」とか、ストラヴィンスキーの「春の祭典」とか。ふだんは窓際に寄せているスピーカーを、セッティングするとこんな感じになる。

マーラーの交響曲第1番「巨人」、バーンスタイン指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ交響楽団のCDをけっこうな音量で聴いてみた。サブウーファーを組み込んだメインシステムに比べると、さすがにコントラバスや大太鼓など低音楽器の迫力や、ホールトーンの響きは出ない。そこは残念なところだけど、逆に点音源から音が広がって楽器がしっかり定位する感じはある。気になったのは意外にトゥイーターの性能で、メインで使っているクリプトンのリングトゥイーターの滑らかな音に慣れてしまうと、DALIのソフトドームのシャカシャカというか、突き刺すような感じが耳につく。
たとえば広い部屋に置かれたタンノイのオートグラフと比べると、心地よく鳴り響く感じはまるでない。まあ全然ないんだけど、オートグラフで気になる音の濁りがなくて切れ味の良い鮮明な音だ。どちらが良いというのではなくて、オートグラフがコンサートホールの疑似体験なら、このシステムは作品をくっきり聴くという感じだ。低音のレンジや量感があると、聴きごたえというか、お腹いっぱいの感じは出て来る。それもオーディオの楽しみのひとつであることは否定しないけど、低音の量感を追い求めてしまうと、音楽が聴こえなくなる、ということもあると思う。
話は横道にそれるけど、先日NHK-BSで放送された、広上淳一指揮京都市交響楽団の「巨人」の方が演奏も録音も良かったような気がする。広上さんのあっけらかん体操みたいな振り方はいまいち興ざめだけど、相当に細かいところまで練りこまれている印象をもった。録音はハープの弦が震えるのがはっきり聴こえて、鳥肌ものだった。