よく言われることですね、「ジャズ向き」とか「クラシック向き」とか。「ロック向き」や「アニソン向き」があんまり言われないのは、ナマ音がないからでしょう。<いちおう「ジャズ向き」と「クラシック向き」>ということにしておいて、話を進めます。
スピーカーに「ジャズ向き」とか「クラシック向き」とか、本当はそんなことはないのが理想だろう。オーディオ雑誌の新製品のレビュー記事を読むと、だいたいはジャズでもクラシックでも「良く」鳴るように書いてある。その行間と言うか、細々と書かれている文言をどう読むのかが腕なのかもしれないけど、それは本題ではないので置いておく。
昔は「ジャズだったらJBL」で「クラシックだったらタンノイ」、国産は「モニター的でつまらない」とか「新素材に走ってヒドい音がする」というのが固定観念だった。昔、昔、その昔の話だ。それが「このJBLはクラシックも凄く良い」と記事に書かれるようになったり、あるいはふだんジャズを聴いている人がタンノイを導入するとかで境界線が崩れていって、それまで国産機のナワバリだった「モニター調」に攻め込んでくるようになった。国産品だと「つまらない」で舶来品だと「優等生」になるのが情けないところだけど、モニター調のど真ん中をつくB&Wとかも入ってきて、国産機は壊滅に近くなってしまった。安く大量に作るビジネスモデルが通用しなくなったということもあるけど、何だかなあと思ってしまう。
コンピューターで設計して、何でもソツなく聴かせるスピーカーが増えて来たとは言え、やっぱり「ジャズ向き」と「クラシック向き」はあると思う。それは音の広がり方で、音がスピーカーの前に飛んでくるのが「ジャズ向き」で、後ろに広がるのが「クラシック向き」。この違いは音質の好みを越えたもので、実際に使ってみると「ハマる」かどうかが分かる。
「ジャズ向き」のスピーカーでクラシックを聴くとか、あるいは「クラシック向き」のスピーカーでジャズを聴くには、セッティングの工夫が必要なのだと思う。ジャズは直接音を浴びるように聴きたいし、クラシックは間接音の中に身を浸したい。ヘッドフォンだったらそんな手間は要らないけど、スピーカーがハマって鳴っているのが分かると楽しくなる。