2022年05月24日

エクスプローリング・ザ・フューチャー / カーティス・カウンス    CD

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「ノーヘルで宇宙遊泳はないよね」と小学生にツッコまれそうな、カバーアート。タイトルもまた仰々しく「未来探検」だけど、中身はそんな大それたジャズではない。マイナーレーベルのDootoからリリースされたこの録音にはハロルド・ランド(ts)、ロルフ・エリクソン(tp)、エルモ・ホープ(p)、フランク・バトラー(ds)がつきあっている。エリクソンは知らなかったが、スウェーデンの人で力強いブロウを聴かせてくれる。何と言ってもこの盤の目玉はマイナーなピアニスト、エルモ・ホープが自作曲を4曲もひっさげて参加していることだ。特徴のある曲作りと演奏で異彩を放った人だけど、こんなところで聴けるとは思わなんだ。ハロルド・ランドは相変わらずの安定感を見せつけてくれる。(Exploring The Future / Curtis Counce Quintet   1958 Avid Jazz)
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2022年05月23日

2022年6月号

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表紙は白抜きの「ライヴ盤が好きだ」の下に、「Live Albums」と銀で書かれている。昨今はなかなかライヴを体験できないので、オーディオでライヴ盤を楽しみましょうということか。想像するに音楽家にとってはスタジオ録音が「作品」なら、ライヴ録音は「記録」だろう。だったら聴く方もそれなりの装置、セッティング、聴き方をしていきましょうという目のつけ所は良いと思う。

萩原健太、ピーター・バラカン、天辰保文の鼎談は、タダの音楽好きとして語り合う企画で、こういうのは楽しく読める。萩原さんはNHK-FMの番組では、曲にまつわるウンチクをあれこれ語ってから最後に曲名を紹介して、曲をかけていた。曲を知ってからウンチクを聴いた方が連想が広がるだろうに、不親切だ。業界用語で「引っ張り」というのか、せっかちなぼくにはとても聴いていられない代物だった。江戸の仇を長崎のそのまた離島で討ってやりたい気分だ。

「クラシックディスク史に名を残す ライヴ録音10選」があって、ナゼ同じようにジャズのライヴ盤が取り上げられていないのだ? 演奏者と聴衆との相互作用がライヴ盤の妙味であって、それを一番に楽しめるのは……落語だろう。落語は音楽じゃないか。その次が即興でやるジャズで、その次はひたすら盛り上げるロック。クラシックは謹聴するだけなのに、果たしてライヴならではの面白味があるのだろうか? コンサートホールの響きを含んだ音を聴く、ということか。ライヴだと録音のためにマイクを林立させるわけにいかないから、素朴なマイクのセッティングになる。楽器にマイクをくっつけたようなのが好きな人もいて、それは好みの問題ということになるのだろう。

「ライヴを魅せる・聴かせるスピーカーはどれだ?」は、面白い企画だった。タイプの違うブックシェルフ・スピーカーを、8機種取り上げている。老舗のJBLからは4309が登場していて、たまにはJBLで聴きたいよなあなどと思ってしまう。細かいことは気にしないで、あっけらかんとした鳴りを身体で受けとめるのも、たまには良いと思う。

「Stereo試聴室」には、トライオードのKT88プッシュプル プリ・メインアンプ TRV-88XRが登場。この価格で低能率のスピーカーも十分に鳴らせる(であろう)真空管アンプというのは、魅力的だと思う。トランジスタのフォノイコライザーまで内蔵されている。アキュフェーズのパワーアンプP-7500は8Ωで300Wの大出力で、49Kgという重量も衝撃的だ。4人の評者がそろって「9」以上(藤岡さんは9.5)をつけた製品というのも、記憶にない。テクニクスのスピーカー SB-C600はペアで11万円のコンパクトなモデルで、位相にこだわった点音源スピーカーとして存在感がある。何はともあ、れ国産ブランドには頑張って欲しい。「マネシタ電機」などとはもう言いません、はい。

「注目製品ファイル」では、エソテリックの Grandioso T1が「価格未定」で掲載されている。マーク・レヴィンソンなんかもターンテーブルを出しているし、アナログブームは凄いことになっているのだと思ってしまう。それにしても200gもない塩ビの薄っぺらい板を回転させるのに、46Kgの本体に18Kgの電源部をあてがうというのは、何か違うんじゃないか。デジタルという技術がなかった時代のアナログレコードに、途方もなく手間と物量を注ぎ込んで、何人の人が楽しめるのだろうか? それよかテクニクスのSL-1200M7Lは12万円で、金色のトーンアーム、ボディは7色の展開で、こっちの方が楽しそうじゃないか。

田中伊佐資「ヴィニジャン」は「川越レコード旅情」で、自分もいつか行ってみたいと思うような記事だ。田舎暮らしが板についてトシを取ってくると、東京のど真ん中を歩くと人に疲れてしまう。川越をぶらぶら歩いて、たまには鰻も食べてみたい。糖尿病の予備軍から正規軍に昇格したと宣告されたので、甘ったるいタレのかかった鰻もどんぶり飯も、それをかっこむように食うのも、ご法度なのだ。「さんざん歩き回ったから、たまには良いんじゃない?」と、心の中の悪魔がそそのかしてくれるだろう。
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2022年05月22日

ソウルヴィル / ベン・ウェブスター

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ベン・ウェブスター(ts, 1909〜1973)はコールマン・ホーキンスの流れを汲んだ人で、晩年を過したアムステルダムで亡くなった。これは48歳のときの録音で、オスカー・ピーターソン(p)、レイ・ブラウン(b)、ハーブ・エリス(g)、スタン・リーヴィー(ds)と組んだクインテットによる演奏だ。瀬上保男氏のライナー・ノートによると、ダウンビート誌の評価で5点満点中の4.5点を与えらえており、スイングジャーナルのゴールド・ディスクにも選ばれている。

アップテンポでモリモリと攻めるのではなく、ゆったりとした曲でユーモアをかもしだすような演奏だ。太い筆にたっぷり墨を含ませた、遊びごころに満ちた書を思わせる。渋い魅力を放っているのは確かだけど、名盤とまでは言えないのではないか。ウェブスターはSP盤の時代に全盛だったので吹き込みが少なく、LPで聴けるというだけで高評価をもらっていたのかもしれない。モノラル録音。(Solville / The Ben Webster Quintet   1957 Verve)
タグ:VERVE
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2022年05月21日

アーバー・ゼナ / キース・ジャレット    LP

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学生時代は、トリオレコードから「ブルー・モーメント」の名前で売られていた。よく中古盤屋のエサ箱に入っていたから、手放す人が多かったのだろう。少ない予算で一枚でも多く聴きたかった当時でも買わなかったのは、ストリングスが入ったのなんか下らないと思っていたからだし、その青臭い観念がいまとなっては懐かしい。

キース・ジャレット(p)、ヤン・ガルバレク(ts, ss)、チャーリー・ヘイデン(b)と、ムラデン・グテシャ指揮のストリングス(シュトゥットガルト放送交響楽団)によるアルバムで、3曲ともキースの自作曲(オマージュであり、具体的に名前が挙げられているのはチェロ奏者のパブロ・カザルス)で構成されている。グテシャはもともとトロンボーン奏者で、ジャズの編曲を数多く手がけているだけに、ジャズのビートが沁みこんだ指揮をしているように思う。とは言っても、「ジャズ」と言うよりは「現代音楽」なのだろう。

「ジャズとクラシックの融合」は、ボーダーレスのいまとなっては陳腐ですらなく、居場所のない言葉になってしまった。でもこれが吹き込まれた1970年代には、大マジメに取り組む人もいただろうし、それが新しい時代の音楽だと受け止めた人もいたのだろう。いまあらためて聴いてみると、この録音はジャズでもクラシックでもなく、両者を融合したものでもなく、ただひたすらに音楽であると思う。キースは唸らずにキレのあるピアノを弾いているし、ガルバレクはよく歌っている。ヘイデンはA面のみの参加で、しっとりとした音色でソロを聴かせてくれる。(Arbour Zena / Keith Jarrett   1975 ECM)
タグ:ECM
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2022年05月20日

CD5 ベートーヴェン ハイドン ピアノ・ソナタ / スヴャトスラフ・リヒテル

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ピアノ・ソナタ集で、ベートーヴェンは第6番と第7番(ともに1980年)、ハイドンは第39番と第47番(ともに1985年)を収録。いずれもライヴ録音で咳が聴こえる。大きな手で無理なく押さえる安定感と、透明感のある音色にはうっとりさせられる。もちろんベートーヴェンも悪くないけど、ハイドンの方が音数が少ないぶん、透明感のある音色が活きてくるように感じる。
posted by あおのり at 22:22| Comment(0) | TrackBack(0) | Legendary Soviet Recordings