マツダの「ベリーサ」をご存知だろうか。二代目デミオのシャーシに、ちょっと上質なボディをかぶせた車だ。初めに買ったのは、この色。ディーラーで試乗車を売ってもらったから、新車で買うよりは安かった。

排気量1,500ccの小型車だけど、中は広々としていたし、荷物もたくさん積めた。いわゆるステーションワゴンだ。遮音性の高いガラス窓やガス封入ショックが使われていて、乗り心地も良かった。家族4人で乘るには必要十分だった。4速ATのためか燃費はいまいちで、夏場は14km/l〜17km/lくらいだった。4年前の17万キロまでほぼ無故障、エアコンのダイヤルの球切れくらいだったけど、エアコンがダメになって手放すことにした。でも同じような車を探してもなかったのだ。日本の自動車産業はミニバンとSUVに傾いて、実用車を求める人は軽自動車を買う時代になってしまっていた。

たまたま中古車屋に出ていたベリーサを、また買ってしまった。走行距離は6万キロ代、半年の車検がついて車両価格が39万円と強烈に安かった。初代はヘッドライトがゼツボー的に暗かったけど、二代目はHID(ディスチャージ)になって、フォグランプもついていた。ライトとワイパーは自動的に作動するし、「カーオーディオ」じゃなくて「カーナビ」がついていた。ありがたや、文明開化だ。でも14万キロになったらガタガタと異音が出るようになって、買い替えることにした。モトは取ったでしょう。
それで、何にしようかと思ってネットで物色してみたり、中古車屋を見て回った。ここのところ仕事と家庭の事情で、年間で2万5千キロは走るので、新車を買っても4年で下取りがつかなくなる(……だろうなあ)。それにうちは妻用の軽自動車も必要なので、なかなかね、新車は買えないんですよ。アウトドアが好きなので、いわゆるセダンはパス。そうなるとSUVと呼ばれるジャンルの車がワンサカで、あのいかつい姿はどうしたって好きになれない。家の周りは4メーター道路で、そんな細い路地ではデカいSUVやミニバンはすれ違いも難儀だし、歩行者だって上から見下ろされるのは感じ悪いと思うのだ。
だいたいにして環境保護だ脱炭素だと言いながら、どうして重い車を作るのか全く意味不明なのだ。いや意味はあって、ようするに輸出仕様だ。日本の狭い道路に合わないとか燃費が悪いとか、そんなことはどうだって良いのだ。ミニバンも輸出使用なのは、言うまでもないだろう。せめて日本人が1500ccクラスの車をせっせと買ってくれれば……と思うけど、ファッションというのはどうにもならない。
家族4人がゆったり座れて、走行性能も安全性も経済性もそこそこに備えている合理的な車は、ベリーサのようなコンパクトなステーションワゴンに尽きると思う。でもマツダはベリーサをモデルチェンジすることなく、廃番にしてしまった。スバルのインプレッサは、3ナンバーになっている。いま外国で売れるのは大きな車だからと言って、やみくもに追随していて良いのだろうか。いずれ燃料事情もひっ迫してくれば、軽くて燃費の良い車が求められるようになるだろう。コンパクトな車を作り続けてその技術を蓄積することが、いずれ日本の自動車メーカーのアドバンテージになると思うのだが。