2021年12月31日

ぼくたちには歌がない

休日に用事がなければ山歩きをするか、自転車に乗りたい。インドアの仕事なので、出歩くのが息抜きになる。とある山頂で休んでいたら、「俺はよう、大晦日は紅白歌合戦つまらなかったら岩手山に行くのよ」と言うおっさんがいた。岩手山は標高こそ2000mちょいだけど、緯度が高くて単独峰なので、空気の薄さを除けば富士山と同じ条件と思って良い。天候に恵まれたとしても、ご来光を拝む前に吹き飛ばされるのがオチだろう。並みの人なら、ね。バカこくんでねえ!と言いたかったが、その前に「24時間で岩手山を4往復した」と豪語していたので、笑って聞くしかなかった。標高差1400mは、これまた富士山を5合目から登るのと同じなのだ。並みの人ではないのか、いまや絶滅したかに思われたホラ吹きなのか、どっちかだろう。

紅白歌合戦は、確かにつまらない。いっそ「昭和歌謡曲」とか「「ニューミュージック」とかに絞った方が、若い人たちにとっても新鮮で楽しめるんじゃなかろうか。いや「東西落語寄席」や「グローバル・ジャム・セッション」の方が良いかな。ともかくラジオやテレビで「みんなで同じ歌を楽しんでいる」ことを前提にしたイベントは、もうそんな時代が終わっているのだから、前世紀の遺物と言ってよい。

昔、昔、その昔は違っていた。20年ほど前のことだけど、老人保健施設で音楽療法のマネゴトをしていたことがある。オカリナで唱歌や童謡、流行り歌を吹くと「鳩笛だあ」と聴いてくれるだけではなくて、歌詞なんか見せなくても一番、二番と、大勢で歌ってくれるのだ。今年の紅白で歌われる「いい日旅立ち」や「津軽海峡冬景色」を、歌詞を見ずに、同世代で歌えるんだろうか。「ぼく」に歌はあっても、「ぼくたち」に歌はない。豊かだけど淋しい世の中だとしたら、どうやって人のつながりを作っていくのか。偽りの世界と言ってもよいSNSで、満たされるんだろうか。せめてコンサートやライヴに出かけましょう、コロナの様子をうかがいつつ。

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2021年12月30日

1950〜60年代のジャズを聴く MMカートリッジ編

MM型とはムーヴィング・マグネットの略で、ダンパーで支えられているカンチレバーの針の反対側には、磁石がついている。コイルの巻数を稼げるので高出力で針交換もできるし、大量生産に向いているので安い。特許を回避するためにIM型、オーディオテクニカのVM型など、様々な亜種変型が出たけど、ここではすべて「MM型」で扱います。

「そりゃもう、シュアーのタイプスリーでしょ」で終わってしまうのだ。ベイシーの菅原さんが深く愛しているために神格化されて、ネットオークションでは高値で取引されている。でもぼくはヘソマガリなので、TypeIVを持っている。若い頃に「リファレンス」として一世を風靡した、でも高嶺の花で使えなかったTypeIVをオトナ買いしたのだ。それにヘソマガリの方が、菅原さんのスピリットを受け継ぐことになるでしょ。

もちろんTypeIVでも古いジャズは聴けるけど、お行儀が良くなってしまう。MM型で好きなのは軽針圧のシュアーよりも、中電やオーディオテクニカの丸針の安いやつ。針圧を2グラム、3グラムと遠慮なくかける仕様の製品が良いと思う。

丸針は高域が伸びないし、ガシャガシャとした付帯音も感じるけど、音そのものは素直で中域の美味しいところを強調してくれる。溝の底まで届かないので盤のチリに強いし、減ってきても盤を痛めにくい。交換針も安いから、ケチらずに替えることができる。レコードはわずかな例外をのぞいて中古でしか買えないから、大切にした方が良い。

MM型モノラルのカートリッジもあるけど、現行製品はステレオ針で、電気回路のみがモノラルのなんちゃって版だ。そうしないと再発するときにステレオカッティングされたモノラル盤をダメにしてしまうので、しょうがないのだ。モノラル盤しか聴かない人には良いし、50年代の左右泣き別れステレオはモノラルで聴いた方が落ち着く人もいるだろう。

でもレコードのステレオ、モノラルに合わせてカートリッジを替えるのは面倒だ。グラドの安い製品は、同じ重量と針圧でステレオとモノラルが出ていて、シェルやリードも同じくすれば調整不要ですげ替えることができる。これは良いと思ってやってみたけど、そのうちそれすら面倒になった。それにモノラル用に替えてノイズが左右同一になるのは良いにしても、音は劇的に変わらないのだ。たまたまアンプにステレオ/モノラル切り替えスイッチがついていたので、それで済ませるようになってしまった。
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2021年12月29日

CD24 コレッリ 合奏協奏曲集 作品6 / ターフェルムジーク・バロック・オーケストラ

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コレッリ(1653〜1713)はヴァイオリンの奏法を確立した人として知られる。当時は典雅なリュートやヴィオラ・ダ・ガンバのヴィオール属に比べて、芸人が奏でる騒々しいヴァイオリンは眉をひそめられる存在だった。それが立派に主役を張れる楽器であることを証明してみせた、当時としては画期的、衝撃的な作品だ。寺内タケシがエレキでベートーヴェンを演奏してみせたようなものか? ターフェルムジークはカナダの古楽器奏者たちで、指揮はジーン・ラモン。生き生きとした演奏で、録音は透明感の高いものだ。(Arcangelo Corelli  Concerti Grossi Op. 6 / Tafelmusik Jeanne Lamon  1989 Deutsche Harmonia Mundi)
posted by あおのり at 09:16| Comment(0) | TrackBack(0) | Deutsche Harmonia Mundi

2021年12月28日

オパス・デ・ジャズ / ミルト・ジャクソン   LP

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ミルト・ジャクソン(vib)は室内楽のようなMJQでの演奏が有名なわけだけど、本来は熱く燃えるインプロヴァイザーで、とりわけブルーズを得意にしている。フランク・ウェス(fl, ts)とハンク・ジョーンズ(p)、エディ・ジョーンズ(b)、ケニー・クラーク(ds)と組んで、ハード・バッパーとしての姿を見せてくれるのがこのアルバム。プロデューサーのオジー・カデナ自らブルーズを2曲書き下ろして、力の入り具合を感じる。フランク・ウェスはサックス奏者としてはフルートが抜群に良い人だし、堅実そのもののリズム隊に支えられて最高の出来栄えだ。(Opus De Jazz / Milt Jackson   Savoy 1955)
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posted by あおのり at 14:38| Comment(3) | TrackBack(0) | ジャズ 1950年〜

CD21 シューベルト 弦楽四重奏曲「死と乙女」 / ハーゲン弦楽四重奏団

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ハーゲン弦楽四重奏団はきょうだいで結成され、第2ヴァイオリンだった長女が抜けて活動を続けている。1曲目はベートーヴェンの最晩年の弦楽四重奏曲第16番で、2曲目のシューベルトの人気曲「死と乙女」とは、ほぼ同じ頃に作曲されたらしい。演奏はソリッドと言えば良いのか、息づかいや心拍まで合っているように感じてしまうのは、三人が同じDNAを持っていることからくる先入観なのか? 録音は演奏空間を良く再現していて、四人の定位も決まっている。(1992年録音)
posted by あおのり at 08:59| Comment(0) | TrackBack(0) | Grammophon 111 Yellow