2021年10月04日

1950〜60年代のジャズを聴く(スピーカー編)

村上春樹さんは、JBLのバックロードホーンでジャズを聴いている。「僕はご覧のように仕事しながら聴いているので、あまりセンシティブな音よりも、いつも同じような感じで、きちんと丈夫に鳴ってくれるものの方がいいんです。そういう人にとってJBLのこのバックロードホーンというのは貴重なんですよ。」(ブルータス Casa 音の良い部屋 2017)

古典的なJBLのスピーカーで昔のジャズを聴くとぴったりハマるというのは、あちこちのジャズ喫茶でさんざん聴いて来た。フルレンジのユニットで言えば38cm径のD130、20cm径のLE8T。システムで言えばパラゴン、オリンパス、バロン、そして村上さんもご愛用の黒塗りバックロードホーン。ぼくも長らく20cmの2ウェイ機、4301で聴いていた。レンジは狭いしS/N感も良くないけど、ドラムがドラムらしく、サックスがサックスらしく、あっけらかんと鳴るようなスピーカーだった。

古いジャズを聴いているぶんには実にゴキゲンなんだけど、困るのはすべてが「昔のJBLの音」に塗り込められてしまうことだ。新しい録音も聴きたいし、クラシックも聴いてみたい……ということになると、B&WとかKEFとか理詰めで作られたスピーカーに浮気をすることになる。だいたいにしてもとのスピーカーがデカいので、買い増しではなくて入れ替えするしかない。最初のうちは新しいスピーカーにぞっこんで、色々なソースを聴きまくるんだけど、肝心の古いジャズの鳴りっぷりに覇気がない。どうにもガマンがならなくなって、さりとてJBLに戻るわけにもいかず、もう何だかすべてを超越しているようなソナス・ファベールやフランコ・セルブリンに憧れる、あるいは頭を垂れてJBLとヨリを戻す、それとも破れかぶれでウェスタンとかシーメンスに手を延ばす、それともグッと渋くタンノイやハーベスなどの英国製に落ち着く……というのが、昔からジャズを聴いて来た人のたどる道、なのかもしれない。

ぼくは昔のジャズを家で聴くのだったら、フルレンジユニット一発のスピーカーが良いと思う。レンジはもちろん狭いけれど、ネットワークを通していないから、反応が速くてスピード感がある。音が紙臭いと言うか、中高音エッジが効いているのもポイントで、オーディオ的に特性がよろしくなくても、ピアノやシンバルがそれらしく鳴ってくれると思う。問題はなかなか製品がないことで、自作派だったらお手のものだろうけど、一般的なユーザーにはなかなか手が出せないかもしれない。

スピーカーのセッティングは、左右の間を広めに取るよりは、狭め方が良いと思う。もともとが3〜5人のコンボによる演奏で広い音場を再現しようというのではないし、モノラル録音やステレオでも右と左が分かれ過ぎている録音が多いので、中心に集めてしまった方が良いように思う。
posted by あおのり at 19:50| Comment(0) | TrackBack(0) | オーディオ