2023年03月19日

サムシング・クール / ジューン・クリスティ

Avidjunechristy.jpg

ジューン・クリスティ(1925〜1990)の Avid Jazz 2枚組を手に入れた。クリスティは下積み生活の後、スタン・ケントン楽団にアニタ・オディの後釜としてヴォーカリストを務めた。ケントン楽団を退団してからはソロに転じたが、なかなかヒットが出なくて苦労したらしい。ポップ路線をあきらめてジャズ・ヴォーカルに方向転換したら、そこそこ売れるようになったというのが面白い。

ケントン楽団時代の同僚だったピート・ルゴロ(tp)の編曲も洗練されていたけど、クリスティの歌唱も良かった。アニタ・オディのようにバリバリとアドリブをかますことはできないが、ハスキーで野太い声質と、アンバランスに清楚でブロンドの容姿が男心をソソらせたのだ、きっと。惜しいことに1960年代以降はアルコール症のために、まともな録音を残していない。

somethingcool.jpg

ジューン・クリスティと言えば、まずこの録音でしょう。というか、ぼくはこれしか知らなかった。1953年と1955年に録音されたモノラルは、モノクロのジャケット。1960年代に入って録音されたステレオ盤は、カラーのジャケット。でもその後に、モノクロ盤にカラーのジャケットが使われて、ややこしいレコードらしい。
聴くなら声が衰えていないモノラルだけど、さすがは Avid Jazz でモノラル録音の方を収録している。

アレンジと指揮は、ピート・ルゴロ。バックのミュージシャンは大勢クレジットされているが、西海岸の腕利きで見知った名前がゴロゴロいる。ジミー・ジュフリー(ts)、バド・シャンク(as)、メイナード・ファーガソン(tp)、ラス・フリーマン(p)、ハワード・ロバーツ(g)、シェリー・マン(ds)など、キリがないのでやめておくけど、ボブ・クーパー(ts)はクリスティの夫君だ。冒頭の「サムシング・クール」は、ヒット曲になったらしい。(Something Cool / June Christy   1955 Avid Jazz)
タグ:CAPITOL
posted by あおのり at 21:19| Comment(0) | TrackBack(0) | ヴォーカル

2023年03月18日

CD50 ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ / レオニード・コーガン

50 Kogan.jpg

ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」と、ヴァイオリン・ソナタ第6番を収録。いずれも1978年の12月だが、日にちが違っている。伴奏者は娘のニーナ・コーガンが務めている。親子共演というのは、若い頃はちょっと敬遠したくなるものだったし、デイヴ・ブルーベックが息子さんと演っているのはどうもなあ……という目で見ていた。でも自分がトシを取って親子共演の親の方に近くなると、「幸せで良いなあ」と思ってしまうのだから、勝手なものである。

演奏は素晴らしい。二人の呼吸の合わせ方と言うか、間の取り方、強弱と緩急のつけ方の息がぴったり合っているように感じる。親子ならでは、なのだろうか? いずれにしても、コーガンは幸せなヴァイオリニストだったのだろう。コンサートのライヴ録音と思われるが、ノイズはすくない。

posted by あおのり at 15:30| Comment(0) | TrackBack(0) | Legendary Soviet Recordings

2023年03月17日

Symphonies CD8 ベートーヴェン 交響曲第9番

CD6.jpg

演奏時間が77分と長いことは長いけれど、他の交響曲に比べると「ちょっと長い」に収まっているのかもしれない。熱演……と言いたいのだけれど、録音のバランスがどうもよろしくない。合唱が控えめでスケールが小さく聴こえるのに、独唱陣がカラオケマイクを握りしめているようで、どうにもダサいのだ(1989年)。
posted by あおのり at 21:36| Comment(0) | TrackBack(0) | Sergiu Celibidache

2023年03月16日

津軽三味線の神髄 / 橋竹山・高橋佑次郎 他    2LP

chikuzan.jpg

高橋竹山(1910〜1998)は、津軽三味線を全国的に知らしめた大名人。高橋佑次郎との競演や、オーケストラをバックにつけた演奏など、多彩な構成になっている。ペンタトニックのフレーズが繰り返されるけど、いっこうに飽きずに聴ける。素朴な響きからは、山あいの田畑や茅葺屋根の民家が目に浮かんでくる。オーケストラはいまとなったらあか抜けないアレンジだけど、大編成の中でも埋没しない強さがしっかり出ている。日本人の琴線に響くとは言いたいけれど、Z世代にとってはどうなのだろう。
posted by あおのり at 17:09| Comment(0) | TrackBack(0) | その他

2023年03月15日

キース・ジャレットのインタビュー

キース・ジャレットのインタビューがYouTubeにアップされていた。インタビュアーは Rick Beato という人で、キースを紹介するくだりもふくめると、48分の長尺だ。いま77歳のキースは2018年に2回の脳卒中に見舞われて、左半身の不随が後遺症として残っている。自身でも「ピアニストとしての復帰は難しい」と明かしているので、事実上の引退と言って良いだろう。

そのキースがインタビューを受けるだけではなく、左手にベルトを巻いた姿で、右手でピアノをプレイしていた! ピアニストとしてまだやりたいこともあっただろうに、その大きな喪失を抱えながら、左半身がまひした身体をカメラの前にさらしている。脳卒中を起こした後は、音楽に向き合うことも、自分の姿を見られることも抵抗があったと思う。

スタンダーズ・トリオのベーシストは、初めはスティーヴ・スワロウに声をかけたのだとか。「もうウッド・ベースは弾けないんだ」と言われて、ゲイリー・ピーコックにお鉢が回ったらしい。また録音したことはないけど、ボサノヴァが大好きでアントニオ・カルロス・ジョビンのファンだとか、ファンだったら興味深く思う話を聞くことができた。

1980年にマイルスの「ソー・ラー」をソロで弾いている動画を見ているときのキースは、とても良い顔をしていた。この演奏はもう凄いのひとことで、めくるめく世界が展開されているのだけれど、「うーん、よく弾いてるなあ」みたいな満足気な顔を見ていると、涙が出そうになる。これまで50年近くの間、どれだけこの人のピアノから、曲から、アルバムから、あるいは生のソロ・コンサートから、励まされてきたかわからない。本当にありがとう、ご苦労様でしたと伝えたくなった。

インタビューは、キースが作曲してピアノも弾いた大編成のオーケストラを聴いたところで終わりになった。ビート氏は「作曲してください」というメッセージを、込めたのだろうか。ぼくは作曲でも、自叙伝でも、何でも良いから出してもらえると嬉しい。まだまだ、おねだりしたくなってしまった。
posted by あおのり at 22:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽と音楽家